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多動症候群イコール学習障害ではありません
幼児期に多動症候群と診断された子どもが、大きくなって学習障害になるだろうと、医師などの専門家から言われ、さらに心配がふくらんでしまった、という保護者の話をよく耳にします。 学習障害とは単なる学業不振とは異なります。全体としての知的な発達は悪くないのに、読み書きや計算など、一部の能力だけが目立って劣っている(特異的な認知障害がある)ために学習能力が阻害される状態を言います。たしすに多動症候群の子どもたちは、程度の差はあれ、学習能力のアンバランスが目立ち、このような状態になる場合もありますが、その割合は半分くらいです。 能力のアンバランスは(それほど顕著でなければ)「個性」とも言えます。またマイナス面 がある一方で、たとえば、記憶力がとても良かったり、興味のある分野についての集中力がすごかったり、皆が思い浮かべられないようなアイディアを持っていたり…など、優れた能力が見出される場合もあるのです。 劣っている部分を心配するより、持っている能力を見つけて育むことのほうが大切ではないでしょうか。
多動症候群の経過と各時期のかかわり方
★印はかかわり方のポイント

乳児期(0歳〜1歳)
・手がかからないおとなしい子どもと、すでに多動を示す子どもがいます。


幼児期(2歳〜5歳)
・多動や注意力困難など、前に述べたさまざまな状態が問題になってきます。また多くの子どもに言語の遅れがあり、理解より話すことばの遅れが目立ちます。 1幼児期前半(2歳〜3歳)は、多動の他、ことばの遅れ、人とのかかわりの希薄さが気になります。
★しっかりスキンシップを取ること、家族とのかかわりや、やりとりが大切です。 2集団生活に入る幼児期後半(4歳〜5歳)になると、多動性、衝動性、注意集中困難、注意の転動性(注意の移りやすさ)、などの基本的特徴が目立つようになります。先生など管理する側から言えば、集団生活の不適応、集団の中での対応のむずかしさが問題になってきます。
★家庭でも、社会での基本的なルールをくりかえし教え(怒るのではなく)、またそれ以上に子どもの努力や成長をほめ、自信や安心感を失わせないようにします。特に母親が子どもを理解して、安定した気持ちで接することが大切です。


学童期
1低学年では、多動、注意集中困難、注意の転動性が著しく、さまざまな学習障害を示すことが多くなります。情緒も未熟で不安定なため、興奮しやすく、対人関係のトラブルが多いのもこのころです。
★原則的には、幼児期後半の接し方と同様ですが、その子の能力や長所を見つけてそれを評価し、自信を持たせることがより重要になります。家庭や学校で何か皆の役に立つ仕事を持たせ、それを認めていくこともよいと思います。 2高学年になると、ほとんどの子どもの多動や注意力困難などは目立たなくなります。問題も少なくなり、周囲に適応していく子どももふえていきます。しかしいじめ、孤立、家族や先生による叱責などが重なったり、また「他の子どもとの違い」を自覚することにより、ネガティブな自己評価に陥りやすい状況になってしまう場合、家庭や学校での乱暴、不登校などの不適応行動が目立ったりします。
★子どもが、かなり年長になっていることを認識し、一方的に教えたり怒るのではなく、じっくり、本人の思いを引き出し、本人の自主性を重んじ、努力を評価して、ポジティブな自己評価ができるように示唆していくことが大切です。


思春期
・学童期までに状態があまり改善されなかったりあるいは問題点が解決されなかった場合、自分に自信をなくしたり、対人関係や将来に大きな不安を持ったりして、さまざまな情緒面 の問題を起こしたりします。
★思春期には、多動症候群でなくとも、多かれ少なかれ、このような状態があります。対応は学童期後半と同様ですが、より大人として接し、認めていくことが必要です。


青年・成人期
・多くの場合、本人が自ら適した環境や、適した職業を選ぶことができるようになり、学校などで、決まった集団の生活を強いられていた時期より適応しやすく、のびのびと生活できるようになります。まれには、人格障害(特に反社会的性格)、アルコール依存症、薬物依存、精神病様反応が現れることもありますが、このような場合は、子どものころから、まわりの理解がない状況や不適応な環境で育ってきたことが大きく関係していると思われます。 学童期後半以降に起きる問題の大部分は、子どもへの対応や環境いわば二次的な障害によるもので、その時期までの生活指導、環境調整、ときには医学的治療などの適切な対応で防ぐ、あるいは軽減することが可能です。 子どもの問題点を指摘して心配するより、良い面を見つけて育む、また自信を持たせていくことが大切です。また型にはまった子ども像、人間像を望むのではなく、いろいろな個性を認めていく姿勢が重要です。各時期にできるだけ適切に対応し、問題点へもあせらず取り組んでいけば、大きな問題は起こらず、個性豊かな大人に成長していくのではないでしょうか。


多動症タイプの人が適応する社会とは
多動症の子の将来を考えた場合、型にはまった理想的な人間像を期待するような社会、規律を重んじる社会では、なかなか受け入れてもらえず、病的なものとされたり、はじき出される可能性が多いかもしれません。 しかし、個性を自然に受け入れ、個性を重んじる社会では、むしろその個性はうらやましがられるかもしれません。 多動症候群のようなタイプの人がどのように受け入れられるかは、時代、地域、職業によりずいぶん変わってくるのです。 たとえば、江戸時代の江戸っ子の性格は多動症候群に似ているような印象がありますが、社会的に排除されていたとはいえません。かえって「きっぷがいい」などと良い評価があったのではないでしょうか。 多動タイプのキャラクターを、思いつくままに上げてみますと、映画『男はつらいよ』の寅さんも、手塚治虫の漫画『三つ目がとおる』の写 楽くんなども、その例です。また、ひらめきや個性が重んじられる芸術家や芸能関係、またある種の研究者、事業家などは、多動症タイプの人に適した職業かもしれません。我々の医者仲間でも、精力的に仕事をしている人の中に、けっこう多動症的な人が多いように思えます。


|本のご紹介|
※参考文献 すずき出版  落ち着きのない子どもたち多動症候群への理解と対応
著者 石崎朝世
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